Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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映画「関心領域」雑感
今日は家内と映画に行きました。この映画鑑賞の時間を確保するために、昨日は工房で窯入れを行ない、今日は陶彫作品の焼成で他の電気が使えず、工房での作業を一旦中止したのでした。映画「関心領域」は、その内容から言っても私はミニシアターで上映されると思っていたのですが、今年のアカデミー賞国際長編映画賞と音響賞を受賞したので、大きな映画館で上映されることになったのでしょう。これは万人が楽しめる映画ではなく、第二次世界大戦中にアウシュヴィッツ強制収容所に隣接する場所で暮らしたドイツ人家族の物語でした。映画では収容所内で行われた残虐行為は映されず、その轟音と空に吹き上がる黒煙で残虐行為が暗示されていました。壁一つこちら側ではルドルフ・ヘス親衛隊中佐を父とする一家の穏やかな日常そのものが描かれ、母は数年かけて庭を設計・植栽し、プールや温室まで作り上げていました。子供たちも元気に育てられ、友人家族を呼んでパーティをやっていました。この映画の中で私は2つの出来事に着目しました。図録から引用いたします。「ヘス家を訪れた母(祖母)は夜中に収容所の騒音や煙突から上がる炎に耐えられなくなり、娘に何も言わずに家を立ち去る。」祖母は住居の素晴らしさを娘に褒めていたにも関わらず、日々の環境にはやり切れなさを感じていました。「ルドルフが二人の子どもたちと川で水遊びをしていると、焼却炉の灰が流れてくる。彼は驚いて二人を岸辺に上げ、家に連れ帰って浴槽で体中を洗い流す。彼らの関心は日常から暴力の痕跡を拭い去り、夢の生活を維持することに向けられている。この意味で『関心領域』の醜悪さを照らし出すことこそ、本作の狙いだと言えるだろう。」(引用は全て田野大輔著)戦争シーンのない戦争映画として、私にとって本作は比類のない恐怖を感じる映画でした。強制収容所の生活を描いた数々の映画を、私は観てきましたが、本作ほど心に刺さった映画はありませんでした。音響の効果を改めて知った秀作だと思います。