2026.04.07
「ピクチャレスクとイギリス近代」(今村隆男著 音羽書房鶴見書店)の「第4章 ピクチャレスクと建築」の「6ピクチャレスク・コテージの進展」を取り上げます。「コテージは田舎の教会同様に『田舎の自然を飾る』のに『最もふさわしい装飾』であるとモルトンは説明しているが、提案されているデザインを概観すれば、彼の念頭にあった理想像の基盤は紳士用の装飾コテージではなく、労働者用の住居だったことは明らかである。ただし、コテージに不可欠の要素として彼が挙げるのは、『みすぼらしさ』とは正反対の、快適さ・豊かさ・清潔さ・満足感・微笑み、などの要素である。~略~『その土地の周囲の状況』に合わせて建てるということは、建設地で入手可能な建材を必要性や必然性に応じて組み換え、建設地の環境に合うように調整するということだと考えられる。また彼は、その建物内で暮らす住民の使い勝手を最優先することで建物外部の形が決まってくるようにすべきだとも言っていた。つまり、彼が強調したのは住民の生活スタイルと住環境との、そして建築物と周囲の自然環境との調和だった。~略~ガンディーはピクチャレスクに軸足を置きながらも、ちょっとした工夫で『規則的であるもの』は『ピクチャレスク』に変えうるし、その逆も可能であるとする。つまり、建物の古典的規則性とピクチャレスク的不規則性という、相反すると見なされて来た二つの価値を融合させたところに、ガンディーは建築の理想を見出そうとしたと言ってよいだろう。~略~ヴァナキュラー(※日本で言う民家のこと)なコテージをピクチャレスクの一つの基準にするという考え方がモルトンから始まり、そこにナショナリズムに後押しされた『オールド・イングリッシュ』が持ち込まれ、ピクチャレスクはさらに変化していったのではないかと考えられる。ヴァナキュラーも『オールド・イングリッシュ』も定義が曖昧で、両者の区分も明確ではない。P・F・ロビンソンの『農業建築のデザイン』で示される最初の二つの労働者の住居は『簡素』な形で『最小規模』のコテージである上に、『オールド・イングリッシュ』様式であると説明される。」今回はここまでにします。