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「天地創造からアダムとエバまで」(後編)
「キリスト教美術をたのしむ」(金沢百枝著 新潮社)の「天地創造からアダムとエバまで」は11の単元から成っています。今回は〔8リリス〕から〔11労働〕までを扱います。まず〔8リリス〕。「リリスは、オリエントの複数の悪魔が合体してできた女悪魔。とくに、メソポタミアの女悪魔、アルダット・リリとラマシュトゥの融合と言われていて、ふたりの女悪魔を引き継いでいます。アルダット・リリは産褥の母子や新生児を襲う存在でしたから、こうした護符の起源は古いのでしょう。アダムの妻に結びつけた伝承は、後代の『こじつけ』。」次は〔9叱責/楽園追放〕。「楽園追放の顛末は不可解なことだらけです。なぜ神は、人間が生命の木の実を食べ、永遠の命を得ることを阻止したのか。蛇はなぜ人間に禁断の実を食べさせたのか。中世のキリスト教は蛇を悪魔とみなしていますが、楽園に悪魔が存在すること自体、きわめて深刻な問題を孕んでいます。すなわち、『悪』の起源。キリスト教では、この宇宙は唯一神によって造られたとする一元論をとるのが一般的ですが、この世に蔓延する不条理、病苦、悲しみなどに直面すると、『神が全能であるならば、なぜこの世に悪があるのか』というつらい問題に突きあたります。」次に〔10「生命の木」と「死の木」〕。「『生命の木』と『死の木』をともに描いた初期の作例は、スペインのカタルーニャ地方にあります。12世紀ロマネスク壁画の聖母子図です。両側に2本の木があり、聖母の右肩側は緑豊かだけれど、もう一方は枯木です。救い主の誕生によって起きたこの世の変化を、左右で描き分けているのです。キリスト教美術の図像学では、神の右側は『善』なので、聖母子の右に『生命の木』、左に『死の木』。枯木が象徴する原罪が、キリストによって贖われ、永遠の生命に変わることを示しています。」次に〔11労働〕。「エデンの園を追放されたアダムとエバには、苛酷な現実が待ちかまえていました。~略~楽園追放の場面では、耕すための鍬をアダムが抱え、糸を紡ぐための棒をエバが抱えている姿を描くのが一般的です。糸紡ぎは女性の仕事。12世紀イングランドで制作された『セント・オーバンズ詩編』では、創造主がふたりを送り出しています。」今回はここまでにします。