2012.01.16
昨日、「ベン・シャーン クロスメディア・アーティスト」展を見に神奈川県立近代美術館葉山館に行ってきました。ベン・シャーンはアメリカの下町やそこで生きる人々を丹念に描き、それによって社会的な背景までも炙り出した画家です。自分は大学生の頃にK・コルヴィッツやE・バルラッハというドイツ表現派の芸術家に心酔していた時期がありました。社会的なテーマを扱うリアリスムの作家の彼らと併行してベン・シャーンにも興味を抱き始めたのでした。アメリカの禁酒法や大恐慌の時代で、労働者階級の移民を写真に収め、それを独特な色彩で絵画に転換するベン・シャーン。また水爆実験の被害を受けた第五福竜丸を扱った一連の絵画は、日本では有名で絵本にもなりました。社会的な主張はメディアを問わず、絵画や写真の他にグラフック・アートにも表現を求めた、当時としては類稀な作家と言えます。特異な画風という印象を持ちますが、よくよく見ると構成から描写に至るまであまりにも巧みで、計算されたというより天性の表現力を見につけた作家ではなかろうかと感じました。画面がキマッているというのか、全て描ききれていないところもそれで良しとする説得力がありました。個々の作品で気になるモノはまた機会を改めますが、見れて良かったと思えた展覧会でした。