Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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2点の「地獄草紙」
日記として美術館を巡ったことをその日に記録していますが、それぞれの展覧会の詳しい感想は後日改めるようにしています。このところ多くの展覧会を見てきて感想が溜まっています。感想を後日にする意図は、名作の数々を自分なりに解釈して、その代表作を脳裏に刻むために行っているのです。「日本国宝展」は先々週の金曜日の夜に出かけた展覧会です。財善童子立像を一度NOTE(ブログ)にアップしていますが、今回は絵巻を取上げます。会場では地獄で受ける壮絶な苦しみを描いた2点の「地獄草紙」に眼が奪われました。2点はそれぞれ奈良と東京の国立博物館が所蔵しているもので、いずれも亡者や獄卒が動きを伴って描かれる情景に毒々しい色彩、当時は凄まじい迫力を感じたものと思われます。現在は色彩も薄れ、支持体の痛みも激しい箇所が見受けられますが、それでも苦しみ喘ぐ群衆に眼が留まります。自分は動勢のある作品が好きで、様式や形式を重んじる作品よりも面白みを感じます。作者の筆致が活き活きとしていると、内容はともあれ時代の情景をイメージしつつ、心より楽しめるのです。図録によると天道、人道、修羅道、畜生道、餓鬼道と並ぶ六道のひとつが地獄道で、六道の中でも最も苦しみの多いところとされており、多くの経典がその凄惨な様相を描いているとあります。壮絶故に印象に残る絵巻で、常軌を逸しているところに魅力があると思いました