Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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「八大童子立像」について
東京上野の国立博物館で開催されている「運慶展」には、圧倒的な量感に富む仏像が多く、会場を巡っていると私の全身が眼になって、舐めるように見つめてしまいます。理由として、自分の学生時代に力が及ばず、人体塑造に納得出来なかった理想の姿が運慶の仏像に認められるからです。力瘤が目立つ仏像の中で、比較的可愛らしい群像に目が留まりました。「八大童子立像」と題名にありましたが、運慶作と言われる童子6体が展示されていました。鑑賞者はその中でも「制多伽童子立像」に群がっていて、彼が一番愛嬌のある風貌をしているため、人気のほどが伺えました。6体の立像は童子というより青年の体躯をしているかなぁとも思いました。当時の運慶工房がどのくらいの実力を備えていたか、図録の解説から拾ってみます。「八大童子は着衣の彩色文様もひじょうに丁寧で、特にこの時代には截金で表すことの多い地紋様も細い筆で描く点に特色がある。こうした色彩について運慶の指示もあったはずだが、それを実現する力量をもった絵仏師が工房にいたことがわかる。玉眼、銅製装身具の製作も専門の工人がいたはずである。銅製装身具も運慶の像は独特で、厚く、文様に立体感がある。」(浅見龍介著)以上が工房の仕事ぶりを示すものですが、群像そのものについては「本群像は、『秘要法品』に説かれた図像を原則的になぞりながらも、張りのある肉付き、軽快な動作、微妙な表情が、じつにたくみに表現されている。人間の目を再現した玉眼の効果、ひるがえる裳裾や風をはらむ天衣の自然な動きが、まるで生きている童子であるかのような現実感をもたらしている。」とありました。まさにその通り、今にも動き出しそうで喋り出しそうな童子たち。「キモ可愛い!」という中高生の言葉を借りれば「ツヨ可愛い!」と言うべきか、強いキャラに惹かれてしまう鑑賞者も多いはず、と思ってしまった「八大童子立像」でした。