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映画「女は二度決断する」雑感
先日、横浜の中心街にあるミニシアターに「女は二度決断する」を家内と観に行きました。ドイツのハンブルグを舞台に、主人公は生粋のドイツ人女性、夫はトルコ系移民、そこに生まれた一人息子。麻薬に手を染めて服役していた夫でしたが、息子が生まれてから、真面目に働くようになり、幸せな家庭を築いていました。ある日、夫の事務所の前で爆発があり、一瞬にして夫と息子を失ってしまった主人公。在住外国人を狙った人種差別主義のテロであることが判明し、容疑者が逮捕され、そこから裁判が始まりました。裁判では被害者の人種や前科をあげつらい、思うような結果の出ない法廷に、主人公はいらだちます。そこで主人公が最終的に下した決断、これがこの物語の趣旨になるところでした。法の裁きに不満だった主人公がとった行動は、「目には目を 歯には歯を」というハンムラビ法典を彷彿とさせる復讐劇でした。主人公も品行方正とは言えない環境、それでも無差別に行われた極右グループのネオナチによるテロ行為。容疑者は若い男女2人でした。男の父親は息子がヒトラー信奉者であることを法廷で告げました。父親の勇気のある行動に一瞬ホッとしましたが、それも束の間、証拠不十分という判決に憤りを覚えました。現代社会が直面している課題を、本作が炙り出しているような感覚を持ったのは私だけではないはずです。愛する者をすべて失ったら、自分はどうするだろうと私も考えました。自分には守るべきものが何もないと思った時に、どんな行動に出るだろうか、絶望の果てに何が見えてくるのか、映画の疑似体験で得るものは必ずしもハッピーエンドではありません。法律という規制に感情は収まり切れるのか、そんな究極の状況をイメージし、そこから自分なりの決着の仕方を導き出すよう促すのも映画の役割なのかもしれません。