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「怪談四代記」読後感
日本に帰化し、日本の文学で独自な位置を持つ「怪談」を書いて、一躍有名になった小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)。彼の曾孫にあたる民俗学者による軽妙洒脱な随筆「怪談四代記」(小泉凡著 講談社文庫)を読み終えました。小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)を巡る因縁が、不思議な魅力持って子孫まで影響していることを知り、偶然の邂逅に日常を忘れさせてくれる楽しさが、本書には詰まっていました。あとがきにこんな一文がありました。「境港は『妖怪のふるさと』、出雲は『神話のふるさと』と表明し、人々に認知されていますよ。そのちょうど中間にある松江は、小泉八雲によってその霊性が世界に知られています。だから松江を『怪談のふるさと、聖地』にしませんか!」これは松江歴史館で「松江怪談談義」をした「新耳袋」の著者木原浩勝氏から小泉凡氏に提案された内容だそうです。因みに境港市は漫画家水木しげる生誕の地で、鬼太郎ロードがあります。先月島根県に行った折、私は境港市に時間の関係で行けなかったのですが、3つの街に纏わる非日常的な地域性に着目したところに、発想のユニークさを感じました。最後に著者は「怪談」について次のように述べています。「メアリー・ノートンが『床下の小人たち』から、ハリー・ポッター・シリーズがホグワーツ魔法魔術学校から、『もののけ姫』が山の先住民である精霊たちから、『平成狸合戦ぽんぽこ』が多摩丘陵の先住者である狸から人間を照射して、人間世界をいきいきと描き出したように、怪談は異界から人間世界の本質をクローズアップし、人間の生き方、あり方を問い直す役割を担っているように感じる。ハーンもそのことを十分承知した上で、原語の『エコー』に過ぎないと謙虚な気持ちで怪談を70話以上も綴ったのだと思う。」