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「なぜ脳はアートがわかるのか」を読み始める
「なぜ脳はアートがわかるのか」(エリック・R・カンデル著 高橋洋訳 青土社)を今日から読み始めました。副題に「現代美術史から学ぶ脳科学入門」とあって、本書はノーベル生理学・医学賞に輝いた脳科学者が著したもので、言わば科学的視点から芸術を論じているものです。科学に疎い私にとっては新鮮な視点です。自分がどっぷり浸かっているアートの世界を別の分野から眺めてみると、どんな発見があるのか、ややもすると脳科学の圧倒的な情報量に自分が辟易しないか心配ですが、冊子としては適度な厚さなので、何とか読んでいかれるのではないかと思っています。本書の冒頭に「欧米の知的世界が、世界の物理的な本質に関心を抱く科学の文化と、人間の経験の本質に関心を抱く、文学や芸術をはじめとする人文文化という二つの領域に分裂している」と主張する分子物理学者C・P・スノーの言葉があり、「本書の目的は、これら二つの文化が遭遇し、互いに影響を及ぼし合うことのできる接点に焦点を絞って、二文化間の溝を埋めるための方法を提示することにある。」とありました。つまり2つの文化の共通項を見出して橋渡しをしようとする試みであることが私にも分かりました。「本書の中心主題は、『科学者とアーティストが用いている還元主義的アプローチは、目的こそ互いに異なっていても(科学者は複雑な問題を解くために、また、アーティストは鑑賞者に新たな知覚的、情動的反応を喚起するために還元主義を用いる)、その方法は似通っている』というものだ。」また一歩踏み込んで本書のタイトルに表れた意味を有する文章にも注目しました。「科学は、より徹底した客観性、自然界の諸事象のより正確な記述へと導いてくれる。科学的分析は感覚経験の解釈の方法の一つとして芸術作品の知覚を探究することで、脳が芸術作品をいかに知覚しそれに反応するのかを原理的に説明し、また、この経験が周囲の世界に関する日常的な知覚をいかに超越するのかを示す洞察を与えてくれる。」とありました。つまり、なぜ脳はアートがわかるのかをここで導入していることになります。内容に関しては今後単元によるまとめをしていきますが、暫くは脳科学の分野からの思索に埋没していきそうです。秋の深まりに本書をじっくり読み込むのが楽しみになりました。