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「色と脳」のまとめ
「なぜ脳はアートがわかるのか」(エリック・R・カンデル著 高橋洋訳 青土社)の「第10章 色と脳」をまとめます。「フォルムによって色が決定されないとなると、特定の具象的文脈のもとでは『妥当ではない』ように思われた色が、『実のところ妥当である』と見なされるようになる。というのも色は、特定の物体を表現するためでなく、アーティストの内的なビジョンを伝えるために用いられるようになったからである。さらにフォルムと色の分離は、霊長類の持つ視覚システムの構造や生理的特徴に関する知見、すなわち『フォルム、色、動き、奥行きは大脳皮質で個別に分析される』という知見とも合致する。」冒頭の文章が示す通り、本章では色覚等が脳に作用するところを扱っています。「私たちの脳は、おのおのの色を独自の情動的特徴を持つものとして処理するが、色に対する私たちの反応は、それを見る文脈やそのときの気分に応じて変わってくる。文脈に関係なく情動的な意義を帯びやすい話し言葉とは異なり、色は、トップダウン処理の影響をはるかに受けやすい。そのため同じ色が、人によって、あるいは同じ人でも文脈が異なれば違った意味を帯びうるのである。」次は色と情動に関しての論考になります。「芸術作品に対する情動反応に色彩が及ぼす深甚な効果の生物学的基盤は、視覚システムと他の脳領域の結合にある。」これに関する偏桃体の説明があり、私は次の文章に目が留まりました。「色は物体の重要な構成要素ではあるが、孤立した属性ではなく、明るさ、フォルム、動きなどの他の属性とも不可分に結びついている。その結果色覚は、二つの機能を果たしている。明るさとともに色は、特定の物体が、輪郭づける境界のどちら側に帰属するのかを画策することを支援し、陰影や一群の物体の構成要素をめぐるあいまいさを解消する。かくしてたとえば、色は花束のなかから一本の花を見つけられるようにする。」なるほど、脳の働きが日常生活の中で取捨選択に役立っている状況が分かりました。つまり、「私たちは晴れか曇りか、あるいは明け方か真昼か夕方かなどといった日照条件の違いにもかかわらず、たとえば木の葉を見るときにはいつもそれを緑色の葉として認識している。」ことになるのです。それは「色覚恒常」と呼ばれるものだそうです。次は光に焦点をあてた論考が登場してきます。今回はここまでにします。