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映画「エルヴィス」雑感
アメリカの生んだスーパースターで人気絶大だったエルヴィス・プレスリーの生涯を描いた映画「エルヴィス」を封切りと同時に、横浜市鴨居にある映画館に観に行きました。プレスリーは私が子どもの頃にテレビを通じて飛び込んできた規格外のエンターテナーでした。派手な服装に身を包み、腰を振るダンスにパンチの効いた歌声、これぞアメリカを象徴する演出に、私は子どもながら狂喜したのを今も覚えています。本作は、エルヴィスをテネシー州で見出し、大手レコード会社に売り込んだマネージャーのトム・パーカーの視点を通して、スター街道を駆け上がっていく彼の様子を、小気味いいテンポで描いていました。エルヴィスを演じたオースティン・バトラーは、エルヴィスが憑依したのではないかと思えるほど動きや歌声が重なり合っていました。トム・パーカーを演じた名優トム・ハンクスの、癖のあるビジネスマンぶりが傑出していて、巨大なステージに一人の若者を押し上げていく力量が忌憚なく発揮されていました。本作で私が感じたロックのルーツは、リズム&ブルースであり、またゴスペルにあるということでした。エルヴィスは幼少期に黒人居住区の近くに住んでいて、白人と黒人両方の教会音楽を肌で感じていたようで、その融合が凄まじいセンセーションを起こしたのでした。本作後半の感動的なシーンに登場する「明日への願い」に、私も気持ちを揺さぶられました。図録の解説から引用いたします。「クリスマス・ソングでアットホームなムードで番組を締めくくらせようというパーカーの目論見を腕尽くで振り切るように、自らのルーツであるゴスペル~ブルースのフィーリングを全開にした感動的な歌声で、混乱した社会に理想を抱き夢を見続けることの大切さを訴える『明日への願い』をエルヴィスは熱唱してみせた。」(荻原健太著)現在もさまざまなアーティストがロックを演奏し、ロックは音楽の一大シーンを作った分野ですが、その草分けには破天荒で真摯に生き、そして逆境に立ち向かい、43年の短い生涯を閉じた伝説的アーティストがいた事実を、私たちは忘れてはならないと思います。