Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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STOLLENの季節到来
STOLLEN(独語シュトレン)とは坑道の意味で、トンネル状になった菓子パンのことを言います。ドイツやオーストリアではクリスマスの1ヶ月前から少しずつ輪切りにして食べていく習慣があります。今でこそ日本では一般的になったシュトレンですが、私がオーストリアを引き上げてきた1980年代には、シュトレンを扱っているベーカリーはほとんどなく、私も暫しシュトレンから遠のいていました。横浜市都筑区にある東京横浜独逸学園(在日ドイツ人学校)の学園祭で、ドイツ人の保護者の方々から手作りのシュトレンをご馳走になり、その懐かしい味に舌鼓を打った記憶が今も甦ってきます。私が海外にいた頃、同じウィーンに住んでいた日本人パテシエがいました。その頃よく彼と遊んでいて、私は美術学校の学生、彼はオーストリア伝統菓子店に勤める身で、私たちは将来に漠然と不安を抱える仲間でした。その彼が出身地の神奈川県川崎市の自宅に戻り、梨畑の一角にオーストリア伝統菓子の店を開きました。日本で流行っている柔らかくフワフワした洋菓子に比べると、彼の作る菓子はどっしりとして食べ応えのあるものでしたが、本物志向が日本に定着するようになってから、彼の菓子は売れ始めました。シュトレンはその頃から彼の得意なパンとなり、さまざまなフルーツやナッツ、マジパンをヨーロッパから取り寄せていたようです。今年はロシアのウクライナ侵攻もあり、全体に値が上がっていましたが、私は彼の店「マリアツェル」から大量のシュトレンを購入してきました。嘗て私のようにヨーロッパに住んでいた彫刻家の師匠や先輩画家、親戚の声楽家たちへ郵送するためもありますが、私自身がシュトレンの味が好きなのです。シュトレンは幼子イエスの産着を包んでいるように見えることからキリスト教と関連が出来たのだろうと思っています。異文化の中で培われた食文化は、今やグローバル化して、日本にいて容易に手に入るものになりました。