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「絶望に終止符を打つ」について
「アンドレ・ブルトン伝」(アンリ・べアール著 塚原史・谷正親訳 思潮社)の「第Ⅲ部 シュルレアリスム革命」の「第二章 絶望に終止符を打つ」についてまとめます。ここは主にシュルレアリスムと政治行動について書かれた単元です。「彼自身の答えは二重のものになるだろう。すなわち、シュルレアリスムを深め、そして政治活動に出る、というものだ。春から、シュルレアリストたちは、共産党の出している文化雑誌『クラルテ』の指導者たちと接触を持ちはじめた。アナトール・フランスを批判する文書が出て以来、両者のあいだに小競り合いがあったが、それがかえってたがいに近づくきっかけになっていた。五月に出たヴィクトル・クラストルの記事は、シュルレアリスムのことを共感を込めて紹介し、革命をめざす過激な意志を持つ運動だと強調した。ブルトンはこのシュルレアリスム論を称賛し、それまで自分が読んだものの中でもっとも幅があり、もっとも理解の深いものだと述べた。」共産党についての文章がありました。「芸術家を擁護する動きがあらたに出てきたのに力を得て、シュルレアリストたちは小冊子『真昼間に』で、仲間の五人(アラゴン、ブルトン、エリュアール、ペレ、ユニク)が共産党に入党した理由をならべ立てている。そして、『革命的現実の意識』をコミュニストたちと共有しつつも、ひとつの派閥を形成することは差し控えると言明し、『これまでは自分たちの得意な分野ではなかった領域に属する問題に早まったかたちで』意見表明するように強いないでほしいと頼み、自分たちの真の能力を党が活用しようとはしてくれないと嘆いている。~略~ブルトンは、それまでいくども疑問視してきた党へ参加すると公に宣言し、その一方で、党内の規律にしたがうことは拒否した。彼の希求にかなう行動を要請されるように願っていたのに、どのような決定を下すかは最初からわかっている指導部を頼みにしようとしたのである。これは、知らず知らずのうちに本人も感じていた、人間関係と愛情面での二重の失敗から逃れようと、前向きの逃避を決意したためではないだろうか。」今回はここまでにします。