Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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ダリについて
「シュルレアリスムのために」(瀧口修造著 せりか書房)は、個々の芸術家に関しての文章が掲載されていますが、今回はサルバドール・ダリに関する論考が2つありました。論考には「超物質的形態学」と「謎の創造者」という表題がついていたのは、ダリがシュルレアリストのなかで重要な立場にいることを示しています。2つの論考から気を留めた箇所をピックアップいたします。「人間はつねに認識において、相反する二つの面ないしは傾向を持つ。形而上学的な論理的体系の構築において人間は実に巨大な足跡を印しているが、微風にさえも消えてしまいそうな、幻想的な、非体系的な、直観的、非論理的な領域においても侮ることのできない遺産をもっている。~略~彼(ダリ)の芸術は飽くまで自発的な象徴的凝固力によるものであり、ただその表現において強烈な客観法をとっている点が、彼のいわゆる批判という言葉に相当するのであって、狂人そのものの芸術とは明瞭に区別されるべきだと思う。~略~ダリの出現はまったく疾風迅雷的な観を呈し、センセーショナルであったために、シュルレアリスムの絵画即ダリの絵画というような錯覚をさえ一部の人たちに与えたのも無理のないことであろう。~略~ダリは好んで柔軟な物体を、しかも偏執的に強調して描いている。有名な柔かい時計もそうであり、やっと木製の支柱で支えられた脂肪質の軟かい肉体的変形物もそうである。こうした柔軟性の、あるいは流動性の物質はダリの形態学の特徴である。また無限を思わせる澄明な空気や、微塵までも見えそうな不思議な照射光線は空間に異様な密度を与えることがある。」私もシュルレアリスムを知った高校時代には、ダリの絵画がその代表として印象にありました。シュルレアリスムの中でダリは重要な芸術家だけれども、その体系ではほんの一部でしかないことを認識したのは大学で美術を専攻してからでした。今回はここまでにします。