2025.11.06
「宗教図像学入門」(中村圭志著 中公新書)の2つ目のパート「開祖と聖人の生と死」は5つの章から成り立っています。今回はそのうち2つ「第4章 降誕」と「第5章 開祖の生涯」を扱います。まず降誕についてです。「インドでは宗教のいかんを問わず、あらゆる生物が延々と生まれ変わりを繰り返すという世界観、すなわち輪廻転生を当たり前としていたので、釈迦の伝記にも前世の神話が付け加えられた。だから釈迦は前世までの無数の過去世において自己犠牲的な善行を重ねてきたので、このたび世界の救済者として誕生することができたことになっている。~略~仏教には輪廻転生があるので、釈迦の過去世を神話化することで釈迦を特別な存在として描くことができたが、輪廻信仰をもたないキリスト伝の場合は『神の子』の誕生という形で神話化している。聖母マリアは処女でイエスを生んだ。マリアの夫ヨセフはイエスにとっては養父であり、実の父は天にまします父である。」次に開祖の生涯について記します。「仏教は修行の宗教である。釈迦の伝記は、修行を決意して完成させた大先輩の物語となっている。キリスト教は神を信仰する宗教である。イエスの伝記は神の子が地上に『神の国』の秘義を開陳していく物語となっている。~略~釈迦の教えの核心は瞑想による自己観察にあり、《快楽》と《苦行》の両極端を避ける《中道》を重んじる。この図式はそのまま伝記を枠づけるものとなっている。つまり、何不自由ない王宮暮らしが快楽を、出家してからが苦行を表し、その後にくる菩提樹の下での瞑想と悟りが中道というわけである。~略~イエスはユダヤ教徒であり、伝道の対象はパレスチナのユダヤ人たちだ。ローマ皇帝の権力が強まっていく中、ユダヤ人たちは救世主が現れて世界の構造を一新するのを待ち望んでいた。地上の権力は倒され、病気は消えてなくなり、死人までが甦る。そんな終末ユートピアの待望だ。」ここでは仏教とキリスト教を扱いましたが、そこには強烈な人格を有する開祖がいたからです。ヒンドゥー教や神道には開祖がいないので、ここでは取り上げませんでした。今回はここまでにします。