2026.03.16
「ピクチャレスクとイギリス近代」(今村隆男著 音羽書房鶴見書店)の「第3章 ピクチャレスクと庭園」の「2庭園論の変遷」を取り上げます。本単元はメイスンの「イギリス庭園」が中心になります。「この『簡素』が教えてくれる造園のルールは『自然から導きだされた』ものであると言う。『簡素』はこの詩の中でたびたび賞賛されているケイパビリティ・ブラウンの造園の真髄とされており、逆に『簡素』を欠くその正反対の例としてはフランス風の整形式庭園や、メイスンと対立していたチェインバーズの中国趣味の庭園が挙げられる。~略~造園理念の基本は、自然の『多様』で『豊かな』部分部分から『美しい全体』を生み出すことであり、これはライスダールの絵画の色彩が教えてくれる。この理念のもとに、実際の庭園風景は『前景』、『中景』、そして『遠景』の三つの部分に分けて捉えられ、その三部構成による風景の描出が『調和』を支えるとされる。~略~歩みを進めるにつれて隠れていた全景が次第に視野に入ってくるという漸次的変化の工夫も必要である。つまり、メイスンの造園アドバイスを要約すると、移動による庭園鑑賞者の視点の変化を十分に考慮しながら、奥行きも含めて風景全体の多様性を生み出し、かつ視野全体が調和するように工夫するということになるだろう。初期のピクチャレスクの美学では枠組みに入れられて静止した風景を絵画的に認識するというのが観照の基本であったが、メイスンは自分の意思で動き回って風景を変化させて楽しむという能動的なアプローチを推奨している。~略~フランス風の人工的なこの装飾とは反対に、園内の湖の曲線は林の中を巡る遊歩道以上に『ワイルドに』曲がりくねるように、余り手を入れすぎないでできるだけ元のままの状態を残すようにと彼は指示する。その意図がフランス的要素と同様に結局のところは本質的には人為的であると言えるにせよ、視覚的に景観が『自然』風に見えるかどうかということがイギリス風景庭園の基準とされ、この点が何よりもここでは優先されている。」今回はここまでにします。