2025.11.19
「宗教図像学入門」(中村圭志著 中公新書)の4つ目のパート「儀礼と修行の可視化」は4つの章から成り立っています。今回はそのうち後半の2つ「第16章 戦いか和合か」と「第17章 聖なる文字」を取り上げます。「表象の世界では善は神仏に、悪は悪魔や鬼に振り分けられるが、この対立は伝統によってはそれほど峻厳なものではない。善人にも隠された悪があり、悪人にも人知れぬ善意があるように、神霊たちの善悪の状態もそう簡単には二分割できないと考える伝統は多い。~略~中国的な陰陽のロジックは、『古事記』における二柱の男女神、イザナキとイザナミのイメージにも影響を与えているかもしれない。~略~中国の影響がどこまであるかは分からないが、日本列島では女が巫女として霊界通信を担い、男が政治方面を担うというロジックが伝統的に根強い。~略~大ヒットのアニメでさえ、たとえばポニョと宗介(『崖の上のポニョ』)、三葉と瀧(『君の名は。』)、陽菜と帆高(『天気の子』)、禰豆子と炭治郎(『鬼滅の刃』)に、同様の設定が生きているようだ(いずれの場合も女性が原始の生命、巫女、竜神の生贄、鬼であり、男性が世俗の側に立っている)。」次は聖なる文字。「甲骨文字あるいは漢字というものの始原に呪術ないし宗教があると言うことができる。文字成立の問題を離れても、古代人が呪術的な世界観をもっていた以上、文字の形にそれが反映していないはずはない。~略~イスラエルの民の指導者であるモーセに、神ヤハウェが十戒を啓示した。『出エジプト記』によれば、神は二枚の板に自ら十戒を刻んでモーセに渡したらしい。映画ではそれを、古ヘブライ文字ーより古い文字体系であるフェニキア文字に近いーで再現している。~略~文字の伝播は宗教の伝播と連動しているからだ。インド系の文字の東方への広がりはヒンドゥー教や仏教の伝播と関連している。ヨーロッパのキリスト教はギリシャ系の正教かローマ系のカトリック(およびその派生形であるプロテスタント)かのどちらかだが、これが概ねキリル文字とローマ文字の分布に対応している。そして漢字文化圏の独自性は、この地域が儒教と道教と大乗仏教をミックスした独自の宗教文化をなしていることと無関係とは言えない。」今回はここまでにします。