2007.12.26
ドイツ表現主義は絵画の世界だけではなく、演劇や音楽や映像表現においてもありました。人の内面世界を描くのは何も絵画に限ったことではないし、ぎくしゃくした感情を表現しようとすれば、今までの方法では難しいと考えた結果が表現主義となったと思います。自分はウィーンに暮らした20数年前に、なかなか理解しにくい音楽に接することがありました。これはまさしく表現主義の音楽で、旋律やリズムが聴き取れず、不安定なまま音楽が終わってしまいました。シェーンベルクによる無調音楽というもので、初演当時は大変な物議を醸し出したものだそうです。ウィーンは音楽の都として中世から続く伝統を持っている都市です。そこに現れた新しい価値観による無調音楽なるものが、一般大衆に受け入れられようはずがありません。自分も表現主義の美術には関心があって即刻受け入れたにも関わらず、音楽に関しては初めに拒絶がありました。何度か聴いて理論もわかって、ようやく受け入れましたが、演奏中はかなりの緊張を強いられるのは今も変わりません。 Yutaka Aihara.com