2012.02.22
通勤途中で読んでいる書籍に、頭が左右されるのは今に始まったことではありません。今「クレーの日記」(P・クレー著 南原実訳 新潮社)を読んでいるので、頭の中はクレーのことばかりです。パウル・クレーはスイス生まれの画家で、ドイツを舞台に活躍した芸術家として近現代美術の世界では避けて通れない人です。自分がクレーの作品を知ったのは高校生の頃ですが、初めはホワン・ミロと混同していました。ミロに比べるとクレーは気難しい雰囲気がして、これはスペイン系のミロとスイス・ドイツ系のクレーの民族的な違いかなと思ったりしました。クレーの造形思考の概略を知り、哲学的と捉えるにはまだ高校生だった自分には無理がありました。24歳の時、初めてドイツ(当時は西ドイツ)のミュンヘンに降り立ち、レンバッハ・ギャラリーでクレー初期の怪奇な銅版画を見て驚きました。クレーの心に眠る魑魅魍魎に自分の心は浸されました。クレーが子どものような絵を描いても、何か思索的な要素が隠されていたり、ただの落書きに終わらないのは、こうした初期の試行錯誤があったればこそと思いました。