2013.03.13
かつて人が住んでいた建物が残骸として残る廃墟。とりわけ石造建築は残骸さえ美しいと感じるのは万人にあるらしく、その欠落した建造物を多くの画家が描いています。私も時間が経過し蔦が絡まる廃墟に魅了された一人です。廃墟を描いた画家として頭を過るのは18世紀に活躍した牢獄の絵で有名なイタリアの画家ピラネージとドイツ・ロマン派の画家フリードリヒです。ピラネージが1720年~1778年、フリードリヒが1774年~1840年という生存記録が残っていますが、同時代にあっても2人が出会う場面はなかったように思います。あるいはフリードリヒがイタリアの都市景観を描いた年上のピラネージを知っていたかどうか、歴史に疎い自分に詳しいことはわかりません。ピラネージは、日本で版画による大規模な展覧会があった時に知って、その堅牢な画面構成とモノクロによる迫真性に惹かれました。その時ピラネージの廃墟がある風景が頭に刻まれました。自分がフリードリヒを知ったのはピラネージを知った以前に遡り、何かの書籍によるもので彩度を抑えた画面に荒涼とした雰囲気が印象に残りました。「樫の森の僧院」「雪の中の修道院の墓地」「エルデナの廃墟」は、さらに後になって知るところとなり、その卓抜した表現に驚嘆しました。イタリアとドイツ。いつかもう一度彼の地を訪ねて、廃墟による絵画作品を堪能したいと願っています。