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「保田龍門・保田春彦 往復書簡 1958-1965」
「保田龍門・保田春彦 往復書簡 1958-1965」(武蔵野美術大学出版局)が刊行されることを知って、早速申し込みをしたところ、本書が届きました。自分が大学生の頃、保田春彦先生が同大の教壇に立っていました。自分は池田宗弘先生の下で彫刻を学んでおりましたが、直接保田先生に指導を受けたことがありませんでした。返す返すも残念でなりません。今なら話を伺いに行くところを、当時は保田先生を近づき難い存在と捉えていて、遠くで眺めているだけでした。この頃読んでいた明治時代の日本の彫刻を推進した荻原守衛や中原悌二郎に関する書籍に、保田先生の父上である保田龍門のことが書かれていて、これも自分が保田先生に近づけない原因のひとつだったと述懐しています。雲の上の人に近づくには自分はあまりに彫刻のことが出来なさすぎると感じていたのでした。一度だけ大学内にある工房の扉が開いていて保田先生の制作現場を見たことがあります。加工された厚い鉄板に磨きをかけている場面でした。この時ばかりは町工場の親父さんのような服装をしていて親近感を持ちました。ただ作品の無言の迫力とぎりぎりまで整えられた造形には、鑑賞者を拒むような張りつめた空気が漂っていました。ここまで辿りつくまでに、保田先生にはどんな造形遍歴があったのか、常々知りたいと思っていたのでした。本書は自分の若い頃からの疑問に応えてくれる貴重な書籍です。じっくり読んでいきたいと思っています。