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「視線とテクスト」読み始める
「視線とテクスト」(多木浩二著 青土社)を読み始めました。本書は2011年に82歳で逝去した評論家多木浩二の遺稿集です。多木浩二と言えば写真に関わる評論で有名ですが、本書では建築やデザインに関する評論が網羅されています。本書は造形的な解説ではなく哲学的な思索に終始して、しかも他からの引用もかなりあって、なかなか手強い書籍です。読み始めて楽しいと感じる箇所は、自分が親しんだ作家の引用がある箇所で、たとえば日常性を論じたところでカフカの「変身」が引用されて、「一匹の褐色の巨大な虫に変身したという不条理さは歴史性に属するのであり~略~カフカにおいても明らかに歴史性と日常性という軸のかかわりが問題になった。」という一文です。さらに建築の合理性に関し「アドルフ・ロースの『装飾は罪である』は明快な合理主義を示した」ことに対し、画家フンデルトワッサーがそれを罵ったことを「生とはかかる余計なものによって表出されるとのべることが出来たのも生への新たな総体的把握というひとつの時代的衝動を背景にしているからである。」と結んでいます。イギリスの建築家集団アーキグラムによるテント小屋(インスタント・シティ)に関する箇所で、テント小屋芝居を実践した劇作家唐十郎の「(都市において)現在の構造はただ終末であり、技術的に構成しうる未来などは無意味」としている箇所にも興味を覚えました。通勤の友として、じっくり本書に取り組んでいきたいと思っています。