2015.08.07
1350年にアユタヤ王朝が開かれ、1767年にビルマ軍に占領されて、王朝は幕を閉じました。その間、417年に亘って繁栄した残り香が、今も王朝の歴史を遺跡に託して伝えています。かつて文化の極みがここにあったという紛れもない存在感が、自分を遺跡に惹きつけてやまない理由です。そこに立って周囲を見渡し、空気を感じる瞬間が私は大好きです。次なる造形イメージよ、降ってこい!と自分に言い聞かせている瞬間でもあるからです。アユタヤ王朝は仏教寺院(ワット)が数多く点在していました。崩壊が進み、仏塔が傾いでいたり、ビルマ軍の侵攻で瓦礫になってしまっていて、その未来永劫原型を留められない姿形に、私は自分の造形主題を見て取ります。完全なる建造物では建築様式が気になってしまって、そこに自分の創造力の入る余地がありません。自分は遺跡の欠落した部分に創造を働かせ、自己表現を展開させるのです。観光名所になっているワット・プラ・マハタートにある樹木に覆われた仏頭や、ワット・ロカヤ・スターの野外に寝そべる釈迦像、ワット・ヤイ・チャイ・モンコンのずらりと並んだ黄色い布を纏った仏像群等にも独特な面白さを感じながら、カメラを片手に遺跡内を歩き続けました。これが即座に造形化されることはありませんが、そこに出かけ、肌で感じ、その大きさや敷石等が占める空間を体験することが、自分の中で何かを生む源泉になるのです。