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アインシュタインとの往復書簡
20世紀最大の物理学者であったアルベルト・アインシュタインと、同じく最大の心理学者であったジームント・フロイトの往復書簡が、フロイト選集「宗教論」(日本教文社)の巻末に収められています。これは1931年に国際連盟の勧告によるもので「精神生活の代表的人物のあいだに書簡の往復を活潑ならしめること。ちなみにこれはつねに、とくにヨーロッパ史の偉大な時期にこの形式において行なわれたあの思想交換にあやかるものである。つぎにまた、その書簡のためには、国際連盟ならびに精神生活の共通の利益に寄与するのにもっとも適したテーマを選ぶこと。さらにこの往復書簡を定期的に公表すること。」という内容でした。アインシュタインは「いま述べた少数者(このばあいには支配者)が、戦争によって苦しみかつ失うよりほかにすべのない国民大衆を自らの欲望に屈服させることができるなどというのは、どうして可能なのでありましょうか。」「多数者が上述の手段(すなわち時の支配者たる少数者は、とりわけ学校や新聞、およびたいていは宗教団体をも手中に収めているのです)によって、狂乱や献身の状態にまで熱狂させられることが、どうして可能なのでありましょうか。」「人間の精神的発達を、憎悪や殺戮という精神病に対して抵抗力をもつに至るまで、推し進める可能性があるものでしょうか。」という3つの疑問をフロイトに投げかけています。それに対してフロイトは得意とする精神分析を用いて現実の戦争防止論を述べていますが、人間の心にある破壊衝動を取り上げているため、些か戦争防止に絶望しているようにも感じます。それでもアインシュタインとともに平和主義者を標榜するフロイトは「戦争に対しては、体質的不寛容であり、いわばこのうえなく増大した異常嫌悪なのであります。」と言っています。これはドイツの独裁に対する不安や懸念が最高点に達していた当時のヨーロッパ情勢を物語るものだと感じました。