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映画「少女ファニーと運命の旅」雑感
先日、横浜のミニシアターにフランス・ベルギー合作映画「少女ファニーと運命の旅」を観に行きました。この映画は別の映画を観た際に予告編が上映されていて、物語の輪郭が自分の好きな筋立ての作品であることを知って、必ず観ようと決めていたのでした。私が好む理由は、社会的に迫害を受けていた弱者が、未来に繋ぐべき闘争や脱出を試みる物語を、幾度となく映画で観ていて、そこに自分の人権感覚や生命謳歌に対する確信を持てるからです。ましてや子どもたちが主人公の作品は、絶対に裏切られることがありません。「少女ファニーと運命の旅」も期待通りの作品でした。1943年のフランスで支援組織に匿われていたユダヤ人の子どもたち。密告により施設を追われることになった子どもたちは、ナチスドイツ軍を避けながら、鉄道を乗り継ぎ、スイス国境まで逃走をしていくのです。そのリーダーを任されたのが13歳の少女ファニー。気丈に振る舞う小さな指揮官にも挫けそうな場面があったり、幼い子どもたちは遠足気分だったり、天真爛漫な集団は、やがて試練を乗り越えていくうちに強いチームとなり、固い絆で結ばれていきます。これは実話を基にしていて、当時の指揮官ファニーはまだ存命で、映画のインタビューに答えています。映画で描かれていない出来事は、という質問に対し「国境のフェンスを越える手前で、ドイツ兵を見つけて、木の陰に逃げ込んだ時のことでした。ジョルジョット(妹)の靴が脱げて『靴が…靴が…』と泣き始めたので、私は血が出るほど必死に、彼女の口を押えました。」とあります。鬼気迫る鮮明な記憶とともに、映画では実際の出来事をうまく反映しているとファニーさんは評価をしています。現在の国際情勢を考えると、「少女ファニーと運命の旅」は対岸の火事とは思えない状況があります。人類は嫌というほど戦争被害を経験してきたはずなのに、昨今のニュースで伝えられている隣国の国際社会への挑発を、私はまるで理解できません。私は戦争を知らない世代ですが、映画等の表現でその無残さを理解しています。近い将来、現状の国家同士の鍔迫り合いを告訴する表現活動が登場する日が来るのでしょうか。