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「オブジェを持った無産者」を読み始める
本書「オブジェを持った無産者」(赤瀬川原平著 河出書房新社)は、1970年に現代思潮社より刊行された書籍で、2015年になって河出書房新社から再刊されたものです。私は今年の6月に出張で京都に行った折に、立ち寄った書店で見つけ、装丁が気に入って購入しました。故赤瀬川原平の造形から文書に至る多くの作品は、私に刺激を与え続けてきましたが、本書の中心的な話題は1966年にあった「千円札裁判」で、当時小学生だった私は、この前衛芸術が法的な裁きを受ける現場にも立ち会っていなかったし、事件すら知らなかったのでした。ずっと後になって美術家の道を志した私は、大学の先輩にこんな人がいて、初期の頃に芸術作品をもって検察に立ち向かった前衛作家の果敢な行為を知り、その作品を理解すればするほど魅力に抗えないようになりました。確か千葉で開催された回顧展の最中にご本人が逝去されたのではないかと記憶しています。赤瀬川原平の著作は自宅の書棚に数冊ありますが、「オブジェを持った無産者」は著述家赤瀬川原平としての出発点だったようです。日本に反芸術運動が起こって社会問題になった時代は、乗り遅れた世代の私には少々羨ましい時代でもありました。破壊と創造が解り易いカタチで眼前に広がる光景を見てみたかったなぁと今でも思っています。本書を読んで、少しでもその時代の空気に触れられたら幸いと思っています。本書を数頁捲ってみると、結構難解な箇所が目につきます。著述家赤瀬川原平の先鋭的な思想が表れた瑞々しいものではないかと想像するところですが、通勤の友にしていこうと思います。