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映画「パリ・オペラ座 夢を継ぐ者たち」雑感
常連になっている横浜のミニシアターには遅い時間帯に上映するレイトショーがあって、私は仕事から帰った後でミニシアターに行くことがあります。自宅から車で出直し、ミニシアター近くの駐車場に車を入れて、チケットを購入した後、レストランで夕食を取るのが習慣となっています。家内と一緒の時もあれば、一人の時もあります。「パリ・オペラ座 夢を継ぐ者たち」は家内と一緒に観に行きました。バレエに従事するダンサーやコーチ、振付家や芸術監督がそれぞれの立場で真摯に取り組み、映画全般を通してドキュメンタリーならではの鬼気迫る雰囲気がありました。エトワールとして選抜された上に立ち、それでも理想に近づけない葛藤があり、日々自己を追い込んでいくダンサーの姿勢は素晴らしいと感じました。稽古場に張り詰めた空気感は、彫刻制作にも通じるものがあり、精神的な意味で勉強になりました。パリ・オペラ座バレエ団は1661年のルイ14世の勅命によって創立され、ロシアから亡命した伝説のダンサーR・ルドルフが芸術監督を務めた時代がありました。この時に難解な技術と心理的解釈が取り入れられ、現在も踊り継がれているようです。現代的な音響や動きも取り入れられて、今やバレエはコンテンポラリーアートになっていると思いました。嘗て私がウィーンに住んでいた頃に国立歌劇場で初めてバレエを観て感激したことを思い出しました。その時はロシア・バレエ団が客演をしていましたが、身体が宙を舞う超絶技巧に時間が経つのを忘れました。映画「パリ・オペラ座 夢を継ぐ者たち」もあっという間に上映が終わった感じがしました。躍動する身体をずっと注視することにより、身体言語と言うべきか、私たち鑑賞者はダンサーの腕の角度や手の先のちょっとした動作に、訴えたい主張や表現を感じるようになります。滑らかに移動する身体は瞬時に変化し、ドラマ性をもつようになるのです。この映画でひとつ気になったことは、ダンサー各人がトゥシューズを自分で管理していたシーンでした。足首や足がバレエには重要な要素です。夢を継ぐために妙に現実的な仕草が印象的でした。