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六本木の「京都・醍醐寺」展
先日、東京六本木にあるサントリー美術館で開催されている「京都・醍醐寺」展に行ってきました。副題を「真言密教の宇宙」としてあって、そうであれば弘法大師空海の流れを汲む寺院であることは理解できました。開創したのは聖宝尊師で、空海の弟である真雅阿闍梨の弟子だったようです。展覧会場に入ると「如意輪観音坐像」が出迎えてくれました。これは惚れ惚れするほど美しい観音で、醍醐寺のもつ文化財の質量に惹かれました。この像は「寛治三年(1089)に上醍醐の鎮守として勧請された清瀧宮の社殿内に、准胝観音像とともに清瀧権現の本地仏として安置され、近代まで伝わったようであるが、その本地仏の選定に際して聖宝由来の両観音像を当てることは自然と言える。」(佐々木康之著)と図録にありました。この他にも象に跨った「帝釈天騎象像」や牛に跨った「閻魔天騎牛像」に気が留まりました。数々の名品に加え、「醍醐の花見」で有名になった豊臣秀吉に関する資料もあって、歴史に登場する場面を想像して楽しみました。京都によく出かける私は、まだ醍醐寺に足を踏み入れたことがありません。伝承された文化遺産を見ていると、醍醐寺が果たした役割が多大なものであることがわかります。「聖宝の私寺として始まった醍醐寺は、醍醐天皇の御願寺となったことをきっかけに定額寺として大きく発展して以降、常に国の中枢と接点を持ち続けてきた。」(同氏著)とありました。歴史の中で仏像や絵画は信仰の対象として寺院に奉納されてきましたが、現在は美術品としての視点を持って、美術館で展示される機会が増えました。私としては美術館の照明に浮かび上がる個々の作品を見ていると、信仰よりも鑑賞としての存在感が大きいと感じています。その流麗さや美的感覚に新鮮な驚きがあるからで、寺院の所蔵品に私が惹かれる理由がここにあります。