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茅ヶ崎の「小原古邨展」
先日、茅ヶ崎市美術館で開催されている「小原古邨展」に行ってきました。日本美術史の中で埋没していた芸術家が、これからさらに発見されて脚光を浴びることがあるのでしょうか。江戸時代の絵師伊藤若冲や奄美を描いた日本画家田中一村もそうでした。田中一村はNHK日曜美術館で放映されたことが契機になって一躍有名になった画家でした。木版画家小原古邨もNHKの番組で知りました。小原古邨は明治末期に活躍した画家で、海外への輸出を念頭に置いた版下絵の制作で、海外で人気を博したようです。実業家原安三郎の浮世絵コレクションの中に、かなりまとまった小原古邨の版画が含まれていたことで、今回の展覧会が可能になったことを、私は一人の鑑賞者として嬉しく思います。図録によると「古邨の花鳥画を魅力的なものとしたのは、それが版画であったからといっても過言ではない。例えば、雨の情景を題材とした作品をみると、背景にグレーのグラデーションを加えて雨脚の強さを表現したり、雨の線を単に空摺で加えて霧雨のような柔らかい雨を表現したりと、その多様な表現は、木版画でなければできないものである。」(小池満紀子著)とありました。まさに超絶技巧がなせる優雅な空気感を感じさせる木版画で、花弁一枚に宿る情緒、波飛沫ひとつに宿る生気をじっくり鑑賞しました。茅ヶ崎市美術館は原安三郎の別荘跡に建てられた美術館で、規模としては大きくはなく、浮世絵を鑑賞するにはちょうどいい空間でしたが、テレビ放映があったためか、館内は混雑していてゆっくり鑑賞できる雰囲気ではありませんでした。それでも小原古邨ワールドに入り込んでしまうと時が経つのを忘れ、巧みな画面構成に惹かれていきました。小原古邨はこれから知名度を増していくのでしょうか。もっと注目されてもおかしくない力量を持つ画家であることは間違いなさそうです。