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映画「JUNK HEAD」雑感
昨晩、久しぶりに横浜の中心街にあるミニシアターに家内と行きました。レイトショーであるにも関わらず、上演された映画の客の入りは上々だったのではないかと思いました。映画「JUNK HEAD」は、コマ撮りアニメまたはストップモーションアニメと言われるアナログな技法を駆使して作られていて、その手間暇のかかる画像の面白さに惹かれました。一人の映画監督が7年もの歳月をかけて、自宅兼倉庫に大型テントを増設して撮影を始めたようで、その内装写真を見ると自分の全てを賭けて取り組んでいる様子が窺えました。監督をサポートする人も少なかったのが図録によって分かりましたが、それを補って余りあるほどの熱の篭った表現に圧倒されました。物語は至って簡単で、人類は地下開発の労働力として人工生命体マリガンを創造し、そのマリガンが自らのクローンを増やして人類に反乱を起こします。人類は地下世界で独自に進化するマリガンの生態調査をすることになり、主人公パートンを地下に派遣することになったのです。そのパートンが地下で出会う様々なマリガンの種族や異形生物との関わりがドラマとなり、映画全編にわたって描かれていました。物語としては生態調査のことより、映画はそこに棲息する異形生物の在りようを描いていて、コマ撮りアニメであることを忘れさせる滑らかな動画に、まるで実写であるような雰囲気を感じてしまいました。これは現代に対する提言もあるのでしょうか。もしそうであるなら、遺伝子操作により生殖機能を失った人類は、マリガン族にその生殖の可能性を探るものの、地下に棲みつく畸形な生物に翻弄され、また蹂躙される生活が待っているという警告もあるのかもしれません。地下世界の背景は錆びついた巨大な迷路のようになっていて、腐食した金属や瓦礫があちらこちらに置かれていました。私は錆びついた情景が美しいと感じる感覚を持っていますが、澱んだ空気にどんな未来があるというのでしょうか。