Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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「ピエロと時代環境」について
「ピエロ・デッラ・フランチェスカ」(アンリ・フォション著 原章二訳 白水社)の「第3章 ピエロと時代環境」についてのまとめを行います。ピエロ・デッラ・フランチェスカが生きた時代はどんな時代だったのか、冒頭にこんな文章がありました。「ピエロにとって時代は障害であった。ピエロは絵画によって自分ひとりの世界を創造し、それを時代に対置したのである。」まず、図像的オブセッションの単元から引用します。「ピエロの人間像は同時代の人間像とまっこうから衝突する。一方には苦しみ悶え、熱を帯びた人間が存在し、他方にはピエロの描く、どっしりと身じろぎひとつせず、あふれる光と不動の時間のなかで、自己のフォルムと存在の明証性に満ち足りた人間がいるのである。」次に物語のオブセッションではピエロが登場する少し前の時代の様子が描かれていました。「苦悩の礼賛と演劇性に対する嗜好の行きつく先は、寓意と逸話の過剰生産である。イタリア美術、とりわけ中世末の美術に見られる異教風の図像表現は、そうした病ーこれを『物語のオブセッション』と呼ぼうと思うーに根本から冒されていた。」物語のオブセッションにピエロは異なる方向を持ち続けていたようです。最後にピトレスクなものへのオブセッションですが、ピトレスクとは付随的なもの、予期せぬもの、エピソードに属するものを過剰に描く流行で、ピエロのモニュメンタルな表現とは対岸にあるものでした。「ピエロはピトレスクな人間像にまったく関知せず、可憐なシルエットの代わりに一枚岩の柱のような人体を置いた。ピエロの自然観はまた、ピトレスクな自然観とは似ても似つかず、比べようもなく厳格かつ非情、重厚かつ乾燥していた。ピエロにとって、空間は規則的な形に還元できる堅固な物体の集合であった。空間は夢想の対象ではなく、精神の領域なのだ。」今日はここまでにします。