Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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12月RECORDは「断片から慮る」
一日1点ずつ小さな平面作品を作っているRECORD(記録)は、陶彫の集合彫刻とは違った苦労があります。陶彫制作の場合は年間に数点を完成させていくので、作品がカタチになるまで労働の蓄積があり、その日の気分によって制作が滞ることはありません。日々の中で多少の緩急があっても大きなスケジュールの中で何とかなっていくもので、完成に近くなると徐々に気分が高揚して、図録撮影日という完成ゴールの前では緊張が最大限に達していきます。それに比べて一日1点というRECORDは、その日の気分が作品を左右してしまいます。日によってはヤル気スイッチが入らない時があります。私は気持ちを司るコントロールが出来る人だと自負していましたが、それでも夜になってテーブルに向かうと気分が萎えてしまうこともあります。公務員として働いている時は尚更辛い思いをしてきました。自分の中で決めたことに何故忠実に従うのか分からなくなったこともありました。日記のように創作する、自分の中で喩え1時間でも創作の世界に浸ることは、なかなか無理があるなぁと感じてきました。それでも今までRECORDを続けてきました。ここまでやってきたのだから意地でも止めるわけにはいかないというのが正直な気持ちです。今月のRECORDのテーマを「断片から慮る」にしました。「慮る」は「おもんぱかる」と読み、よくよく考える、考慮する、細かに取り計らう等の意味があります。私たちは物体に取り囲まれて生活していますが、自分の視野は物体全てを見通すことができず、こちらから見える範囲で、それが何であるのか定めています。物体の裏側は想像で補っているのです。視野が見通せる表面的範囲、つまり見るもの全てが断片であるのにも関わらず、そこを慮ることで生きていると言えます。そんなことを私が考え出したのは、彫刻とは何か、空間とは何かを思索したことによって、私たちの視野について思いを巡らせた結果です。数年前に読んでいた現象学の書籍から導き出したことでもあります。今月のテーマをそんな考え方でやってみようと思っています。