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「京劇ー絵を描かれた顔」のまとめ
「仮面ーそのパワーとメッセージ」(佐原真監修 勝又洋子編 里文出版)の「京劇ー絵を描かれた顔」をまとめます。ここでは中国のオペラと称される京劇を扱います。「中国では小劇場の分野に京劇以前の演劇形式が存在した。とくに操り人形劇と影絵芝居は本質的に私たちが中国オペラと称しているものよりも古い。古典的な音楽劇のための先駆となった二つの国イタリアと中国にはつねに民衆的な催しがあったが、これらは宗教儀式に起源を持っている。」さらに北京オペラに話が及びます。「『北京オペラ』について現在定義するならば、京劇を構成している多くの芸術的なジャンルを扱わなければならない。京劇は異なった声と音域をもつさまざまなレベルの歌に立脚している。それゆえ動作はアクロバット的な演技と多様な身体言語、そして何よりも動作に含まれる象徴的内容とともに進行する。男優は太鼓と胡弓そして管楽器から編成されたオーケストラの伴奏で演技を行う。さらなる大きな要素は『顔に絵を描くこと』である。木や厚紙あるいは他の素材から作られる仮面を着けるのではなく、それは顔面に直接描く『化粧という仮面』である。」顔化粧とその象徴性について次のよう述べられています。「化粧ではアーチ形の彩色線によってその時々の人間の個性と心境、思想を観客に知らせる。それはしばしば草書体の図案によって表される。抽象化と『はみ出し画き』は人間の内面的価値あるいは弱さを顔の中で外部に象徴化しているといわれているが、文化の基本概念が違う西洋の観客には、それを理解するのは少し難しい。しかし、何よりも素材に携わらないときは、たちどころに顔の化粧、衣装、身振りによる想像的な身体言語と対話によって、例えば歌によって、中国人の舞台役者と役割を関係付けることができる。~略~化粧の仮面の表現は非常に複合的で、色を多く塗れば塗るほど性格は複雑になり、さらにまた線と点との間で区別される。しかし中国人が演劇においては、登場人物一人一人の役柄によって明確な差別化を図ることを何よりも優先させ、色彩の心理効果を活かしていることが判る。京劇を見慣れた観客は演じられる性格をすぐに理解する。もちろん彼らは個々の人物の特徴もまた結び付けなければならないが、同時に、彼らは単純な『白黒の図式』に帰することはない。」そうした物語の心理的な要素が京劇には存在しているようです。「京劇は、歌、物真似、身体表現、そして踊りと器楽から構成される総合芸術である。『顔に絵を描くこと』、示唆的な身体表現と舞台美術の抽象性によって本質的なものを象徴的に表現する。京劇の内容は、古い民間伝説や中国の歴史から題材を得た出来事から成り立っている。京劇は解説という役割を担い、理想的な形で再現され、伝統的に高度な教育的倫理的機能を果たしてきた。その背景は儒教的な世界観に裏打ちされている。」(引用は全てペーター・ティーレ著 勝又洋子訳)