Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

note

「ヴェネツィアー華麗なる仮面の祝祭」のまとめ
「仮面ーそのパワーとメッセージ」(佐原真監修 勝又洋子編 里文出版)の「ヴェネツィアー華麗なる仮面の祝祭」をまとめます。本書はこの章が最後になります。「ヴェネツィアのカーニヴァルはローマ時代のバッコスの祭に遡るといわれる。記録に拠ると12世紀にはすでに男たちは動物の毛皮を被って変装し、髪に小枝を挿して、弦楽器を弾きながら町を行進した。それに合わせて女たちは歌を歌いながら後に従って歩いた。~略~十日間に渡って開催されるヴェネツィアのカーニヴァルは『聖灰水曜日』の前週の日曜日に始まり、『懺悔の火曜日』に花火の爆音とともに終了する。去年の罪を象徴する巨大な藁人形パグリカッチョが燃やされ、祝祭の終わりを告げる鐘楼の鐘の音が、真夜中の町に鳴り響く。」祝祭の起源に関してこんな記述がありました。「古代アテネにおいて豊饒の神ディオニュソスを称えるための祝祭は、紀元前六世紀の半ばから演劇の上演と結びつき、何日間も続いた。祝祭の場はアクロポリスの丘の南側斜面で、そこには今日もなお紀元前四世紀に完成されたディオニュソス劇場が広がっている。」仮面の意味は何でしょうか。「『マスク』ー仮面という概念は、『嘲り笑い』とか道化師を意味するアラビア語の『マスハラ』におそらく由来すると考えられている。~略~仮面は古代の宗教儀式で多く用いられた。今日でもなおこの風習は例えば南太平洋諸島の部族、チベットやインドなどの祭礼に見られるように、現代では何よりもヨーロッパ以外の諸民族のもとで、大きな役割を果たしている。仮面は宗教的および魔術的な意味を持っている。」ここで私の興味を引くイタリア喜劇が登場します。「古代ローマ喜劇の仮面を16世紀ヴェネツィアに成立した即興喜劇コンメディア・デラルテが継承したと考えられている。コンメディア・デラルテは古くから伝わる黒い皮の仮面を着けて演じるのがその特徴となっている。~略~コンメディア・デラルテの仮面はヴェネツィアのカーニヴァルにしばしば登場する。~略~なかでももっとも人気の高い人物はぺちゃんこの鼻と多彩な彩りの継ぎはぎの衣装のアルレッキーノである。 ~略~不器用なアルレッキーノはいつも殴られているが、生来の機知とユーモアで窮地を乗り切り、主人を煙に巻いてしまう。『笑い』という武器で世間を生き抜く彼のしたたかさが、庶民の抑圧された心を解きほぐしてきた。」ヴェネツィアで有名な仮面と言えば「ペストの医者の仮面」です。仮面の口の部分に薬を詰めて、ペストに罹った患者のもとに通った医者の黒い仮面がありました。「ヴェネツィアで仮面が、カーニヴァルの期間だけでなく普段の暮らしのなかで一つの『顔』となった理由は、閉塞的な都市の構造と祝祭性にあったように思う。二百年の眠りを解かれて現代に甦ったヴェネツィアの仮面カーニヴァル。仮面は私たちを濃密な祝祭の時のなかへと連れ去って行く。その一瞬に現れた空間と時間のなかで、人は遥か古代から現代へ、そして未来へと繋がる『時』の記憶を紡ぐ。」(引用は全て勝又洋子著)