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「道化」のまとめ
「九州の民俗仮面」(高見剛 写真・高見乾司 文 鉱脈社)の「道化」をまとめます。「道化の代表選手は、なんといってもヒョットコである。『ヒョットコ』とは『火男』であろう。火男とは、古代たたら製鉄に従事した技術者で、たたらを吹くたたら師であっただろうと考えられている。~略~『鉄山秘書』によると、菅谷のたたらは、降臨した金屋子神によってもたらされ、実際にたたら製鉄を行ったのは、『村下』と呼ばれた職業集団であったらしい。~略~製鉄における窯(炉)の火度は、数千度にも達するという。その火を見つめ続け、薪をくべ、鉄の溶解の瞬間を見分ける村下は、生涯を通じてその仕事に従事する専業技術者であった。」またヒョットコには「こぶ面」があって、これに関する論考がありました。「私は『ヒョットコ』とも呼ばれるこのこぶ面を『山神の使い』と解釈し、そのような視点で見た。山神の使いであるこぶ面は、服属を強いられた先住民の残像であろう。支配体制化に入らぬ先住の豪族や『まつろわぬ民』などを、『ヤマト族』は、『土蜘蛛』、『熊襲』、『白猪』、『大蛇』などと蔑称したが、山に依拠する先住民もまた『猿』、『狐』などの動物に擬せられた。だが彼らは、服属を誓い、服属儀礼としての『芸』を奉納しながらも、山の民としての誇りを失うことなく、『神』として降臨した荒神や何々のミコトなどにちょっかいを出し、その真似(もどき芸)をして人々の笑いを誘い、ある時は激しく祟る存在として、その存在感をアピールするのである。」道化の代表であるヒョットコを取ってみても、なかなか奥深いものがあり、興味が尽きません。文章の中でまとめになる箇所を選んで引用いたします。「『道化』とは、服属を誓い、剽軽なしぐさで滑稽な所作などを披露して支配者や観客に笑いを提供しながらも、反骨の精神を内に秘め、ときには世相を諷刺し、権力を厳しく批判する芸人であり、神の声を体現する俳優であった。」果たして現在のコメディアンの中に、こうした世相批判精神を宿した人が何人いるでしょうか。大衆に媚び、世相に迎合し、自虐的な笑いを取る人が多すぎて、テレビ番組がつまらないと思っている人は私だけではないでしょう。