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「オットー・ワーグナー建築作品集」を読み始める
「オットー・ワーグナー建築作品集」(川向正人著・関谷正昭写真 東京美術)を今日から読み始めます。昨日まで読んでいた「ウィーン工房」の関連として本書を選びました。ウィーンの建築家ワーグナーは、ウィーン市内に彼の建築物が点在し、その様式美に特徴があります。私は20代の頃、同地のアカデミーで彫刻を学んでいましたが、街を散策中に目にしたワーグナー建築に感性を奪われていました。本書は図版が中心の書物ですが、ワーグナーの建築動機や時代背景が知りたくて購入しました。序文に収められている文章から引用いたします。「オットー・ワーグナー(1841-1918)の建築は、19世紀の歴史主義と20世紀のモダニズムの重なりの上に成立したものだ。」という冒頭の文章があり、実際に彼は19世紀末から20世紀初頭を生きた建築家であったことが分かりました。「ワーグナーは19世紀の歴史主義が陥りがちだった観念的議論や様式言語の知的操作を一蹴して、現実の要請に自らの身体全体で取り組み、しかもできるだけ実務を体験しながら学ぶという新しい考え方を提示して、実際にウィーン造形芸術アカデミーのプロフェッサー・アーキテクトとしてこの教育システムを実践した。求められるものは、骨格、構造、配置構成、形式に支えられつつも、そこに留まらず、豊かで、生命力にあふれ、つくり手の自覚と個性と確信にしっかりと支えられた建築芸術である。~略~ワーグナーの建築が生き生きと輝き、その美と生命を保ち続けているのは、モダニズムの力だけではない。それはまさに芸術の力と考えるべきで、支えているものを、もしイズム・主義で言い表すならば、モダニズムではなく自由主義であろう。しかも、開かれた自由主義である。開かれた自由主義は、芸術の興隆期・開花期に、歴史上にも度々現れていたではないか。それをワーグナーは、先行する19世紀歴史主義から受け継いだのである。」こうした彼の背景と、私が既読した「ウィーン工房」の誕生が私の中で重なり合い、まさにウイーンはハプスブルク君主国としての最後の栄華に包まれていく運命を辿りました。「開かれた自由主義ゆえにハプスブルク帝国の各地から異なる民族の俊英たちがウィーンに集まり、しのぎを削って、建築を含む世紀末文化に大輪の花を咲かせた。開かれた自由主義は第2世代の時代となり、19世紀が末に近づき、さらに20世紀に変わっても、まだ維持されていた。」序文からの引用はここまでにしますが、本書は第1章から第3章まであって、ワーグナーのそれぞれの建築物の考察とその意味するところが述べられています。ひとつずつNOTE(ブログ)にまとめを掲載していくつもりです。