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上野の「ボストン美術館展 芸術×力」
一昨日、東京上野の東京都美術館で開催している「ボストン美術館展 芸術×力」を見てきました。鑑賞者は平日にも関わらずかなり入っていて、米国ボストン美術館の収集作品の質の高さを感じました。同館は古今東西の名品が収集されており、とりわけ日本美術のコレクションの充実ぶりは私でも知っていました。その中でも私は里帰りをしている二大絵巻「平治物語絵巻 三条殿夜討巻」と「吉備大臣入唐絵巻」に注目していて、まさにこれを見に上野まで足を運んだのでした。まず、「平治物語絵巻 三条殿夜討巻」の図録解説によれば「本絵巻は、平治元年(1159)12月9日、上皇である後白河院とその姉の上西門院が、上皇の京都の御所である三条殿から暴力的に拉致された劇的な出来事を描いたものだ。物語は、成り上がりの廷臣である藤原信頼とその取り巻きの源義朝の指揮の下に、数百人もの兵が夜半の三条殿を襲撃する様子を記述する詞書から始まる。これに続いて、視覚的に物語が展開する。まず、襲撃の物音に気づいた群衆が三条殿に駆けつける。そして、兵たちが上皇に同行を迫る。さらに三条殿に火が放たれ、逃れようとする女官たちが暴力で阻止されるといった大混乱が続き、物語は最高潮へと達する。」とありました。私が思わず目を凝らしたのは火の表現です。燃え盛る炎のカタチは仏像の火焔光背のようでもあり、また日本の漫画やアニメはこれを参考にしているのではないかと思えるほど、様式美がそこに現出していました。次に注目したのは「吉備大臣入唐絵巻」で、その図録解説によれば「遣唐使として中国に渡った真備は、その才能を恐れた唐の官人により高楼へ幽閉されてしまう。そこへ現れた鬼は、かつて遣唐使として渡航しこの地で客死した阿倍仲麻呂であった。皇帝の命を受けた官人たちは真備を辱めようと、詩文集『文選』の読解、囲碁の勝負、予言書『野馬台詩』の解読などの難題を彼にもちかけるが、真備は鬼の助けを得つつそれらを次々に解決していく。最終的に皇帝から帰国を許された真備は、数々の宝物(『文選』、囲碁、『野馬台詩』)を携え日本に帰還したという。」とありました。これは吉備真備と阿倍仲麻呂が空間や時間を飛び越えて、問題を解決していく物語で、まさに中国に対する畏怖や優越が交じり合った空想科学絵巻だろうと思います。日本の朝廷が抱いていた中国に対する対抗心が現れているとも言え、ここにも私はSF漫画やアニメの原点があると思ったのは、ちょっと独断過ぎる解釈でしょうか。