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映画「アバター:ザ ウエイ オブ ウオーター」雑感
先日、膨大な制作費をかけて作られた映画「アバター:ザ ウエイ オブ ウオーター」を観てきました。これはアメリカ映画の面目躍如とした壮大なエンターティメント作品で、この世界観を生み出すのはアメリカ以外では不可能ではないかと思いました。博士として出演もしている女優シガニー・ウィーバーさんのメッセージが図録にありました。「『アバター』シリーズの作品複数に参加してきて、ジム(ジェームス・キャメロン監督)がいかに大画面に映る何もかもに心血をそそいでいるのかを目の当たりにしてきた。無限の想像力や創造性を、彼は至るところに丁寧に盛りこんでいる。ジムが生み出す新しいキャラクターや、多様なナヴィの暮らしぶりや、独特な動植物や、パンドラ全体が醸し出す美しさには驚かされるばかりだ。」森で穏やかな暮らしを送っていた家族が、外敵であるスカイ・ピープルの襲撃に遭い、故郷の森を去る決断をして、海洋生息地に住む部族の許に身を寄せます。この巨大なマングローブに縁取られた牧歌的な島々と海中がこの映画の主な舞台になり、家族を追ってきたスカイ・ピープルと対峙することになるのです。物語は人種の壁や、環境に特化した暮らしぶりなど、さまざまな要素に彩られ、そこかしこにエピソードが綴られていきますが、現在の世界を凝縮したような敵対する人の心理や、やがて解きほぐされる共感と連帯がよく描かれていました。映像はそれだけでなく、幻想的なファンタジーがいくつもあって、私が目を奪われたのは「精霊の木」と称される海中に存在する巨木と化したモノでした。図録に「”祖先の入り江”の水面下には特別な存在である”精霊の木”があり、海に住むナヴィはそこに宿るエイワと繋がり、自分たちの先祖と交流する。」とありました。エイワとは「種が環境とうまくバランスをとり、調和して生きていくことを可能にするネットワーク」とあり「地球上では”すべてにおける相互関連性”は、多くの場合、精神的な概念として捉えられるが、パンドラでは物理的に触れることのできる存在である。」という説明がありました。私たちが得てきた知的概念をこのように映像化、可視化して見せていることに本作の特徴があると私は思います。ファンタジーに信憑性を持たせるために、外観のデザインのみならず、内容の面でも創造する必要があったと私は考えました。そこに生息する人々には人種の多様性を受容させ、その前段階として家族愛を謳っていたのでした。本作は3時間以上に及ぶ超大作と言える映画で、観る前はその長さが気になりましたが、あっという間に物語に惹き込まれ、非日常の世界観に浸ることができました。イメージを膨らませることが出来たことでも、観て良かったと思える映画でした。