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映画「MAD GOD」雑感
「ストップモーション・アニメ」という技法で撮影された84分に及ぶ映画「MAD GOD」を今日観てきました。工房に出入りしている美大出身者と美大在学生の2人の女子を連れて行きましたが、「ストップモーション・アニメ」に対して興味が尽きないらしく、観終わった後は気分が高揚していました。「ストップモーション・アニメ」とは言わばコマ撮り動画のことです。造形物を少しずつ動かしていくことで、人物や奇形な物体に命を吹き込むことが可能なため、大変な時間と労力を要する表現方法です。しかも背景も自由に創作できるので、映画監督がイメージした脳内の風景をそのまま表すことが出来るのです。私は以前、日本人監督が作った同じストップモーション・アニメの「ジャンク・ヘッド」を観て感銘を受けました。2021年4月16日のNOTE(ブログ)にその詳細を載せています。今回の「MAD GOD」は、ヒットした数々の米SF映画の特殊効果を担当したフィル・ティペットが30年間を通して制作したもので、その狂気にも似た執念の集大成でもあるのです。「天国よりも地獄が好きだ」と語るティペットは、悪夢のような暗黒世界を演出しました。そこは荒廃したグロテスクなもので溢れ、不条理な拷問が繰り返されていました。そんな地下壕に降りて行った全身を防護服で覆った主人公が、次から次へ目にした救いようのない世界は、鑑賞者である私も戦慄を覚え、これは何かのメタファーなのか、その意図するところを探っていました。人体解剖の場面があり、臓物の中から宝石のような鉱物が大量に出てきた時も、どんな暗喩が隠されているのか、映画監督は鑑賞者に考えさせる何かを提示しているのか、映像を見ながら謎の迷宮に入り込んだ自分自身を外側から眺めている塩梅でした。台詞もなく技法を駆使して表したかったものは何なのか、そのうちこの映画の説明は、ひょっとして不要かなぁとも思うようになりました。そもそも創作物は見る側の解釈に委ねられているもので、それは私の陶彫作品も同じです。映画や文学に対して理屈に叶った説明を求めてしまう癖が、私たち大衆にはあるので、内容がわからないと居心地の悪さを感じてしまうのですが、現代アートは心で感じるだけでいいと考えます。表現媒体が違うだけで、同じ創作物とすれば、観たままに感じ取ればいいのではないかと納得をしました。上映は横浜にあるシネマジャック&べティで、本日が最終日でした。