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「生の現代的観念」について
「アンドレ・ブルトン伝」(アンリ・べアール著 塚原史・谷正親訳 思潮社)の「第Ⅰ部 現代の美への目覚め」の「第三章 生の現代的観念」についてまとめます。「戦時下のヨーロッパにとって、1917年はいちばん暗い年だった。軍隊は塹壕から出られず、冬の寒さは近年になくきびしく、チフスが流行した。」とある通り、戦争がかなり激化していたようです。その最中にブルトンは医師補の資格を取り、陸軍病院に勤務していました。そうした中でブルトンは、アポリネールをはじめとする詩人仲間と交流をしていました。「現代性の観念にとりつかれてはいたが、ブルトンにはそれがいかなる形態を取るべきなのか、まだわからなかった。けれども、彼は疑っていた。そして、この疑いこそが彼の解放の端緒となる。アポリネールは、その文学と美術への好奇心ゆえに、その行動と大胆さゆえに、より真実に近づいているように、彼には思えた。」さらに生涯のテーマがここに登場してきます。「ブルトンはーその後の彼の態度を理解するには非常に重要なことだがーアポリネールがジャン・コクトーの『バラード』のリアリズムに対抗して、自作を形容するのにもちいた『シュル=レアリスト』の概念の生成に、自分〔ブルトン〕が他の誰よりも貢献しただろうと考えていた。~略~『人間は運動を再生しようとして、まるい車輪を創造した。蒸気機関車の動力装置には、その発案者の思考の出発点となったあの〔人間の脚と車輪の〕連結作用を再び見出すことができる。シュルレアリスムはこの発明とこの完成を同時にふくんでいるのだ。』〔アポリネールが『ティレジアスの乳房』の序文にこう書いていたことはよく知られているー『人間は歩行を模倣しようとして、似ても似つかない車輪を発明した。こうして、人間は自分でも知らないうちにシュルレアリスムを創造したのである』。この箇所が『シュルレアリスム』という語の初出例となった。〕」やがて戦争が終わり、ブルトンの新たな時代が始まろうとしていました。「戦争が終わり、今後は完璧に新しい発想を展開できるのだという確信、そして熱のこもった友情、強固な思想、生きることのいっそう直接的な実感、それらがブルトンを輝かしい先輩たちから解放することになったのだ。その上、彼は誠実な副官であるアラゴンとスーポーの力を借りて、旧い芸術にたいする攻撃を開始しようとしていた。彼らにたいして、ブルトンは天性の支配力を行使していたのである。」今回はここまでにします。