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卒業式の思い新たに…
今朝の朝日新聞「折々のことば」に掲載された記事で、私は卒業式のことを思い出し、その時の印象が去来しました。「卒業証書を渡すのではなく、ぬくもりを渡すんです。永六輔」これに著者の鷲田精一氏がコメントをつけています。「昔の卒業式は、もう一生会えないだろうとの前提で臨んだものだったと、放送作家は語る。とりわけ瑞々しい印象として残っているのが、俳優の渥美清が語ってくれた小学校の卒業式だ。校長先生は卒業生らを輪にならせ、右隣の子の手をぎゅっと握ってそれを順に回していくように言い、ぐるっと一周した時、『さあこれでお別れ、さようなら』と言った。『学校ごっこ』から。」卒業式、正式には卒業証書授与式で、卒業生に学業が終了した証書を渡す儀式のことを言います。私は校長だった7年間に7回の卒業証書授与式を経験しました。毎回卒業生が違い、またその子たちを支援した教職員が違うため、式はその学年の雰囲気を伝えています。同じ学校行事で型が決まっていても、生徒たちと教職員が作り出す雰囲気はまるで違うのです。私はどの式が良かったということはなく、不思議なもので毎回感銘を受ける場所が異なっているのです。学校経営は常に難しい課題を抱えていて、私も例に漏れず困難な事態を幾度となく経験してきましたが、私が校長になって良かったと思えた唯一の機会がこの卒業証書授与式でした。生徒たちは私の名前の入った証書を真剣な眼差しで受け取っていきます。証書を受け取ってくるりと向きを変えると私はその子の背中を見ます。これで旅立っていくんだなぁと思える瞬間です。卒業生合唱が始まると多くの子たちが泣きだします。この学校で過ごした年月は大切なものだったのだろうと、生徒のみならず、学級担任の眼にも光るものが溢れています。学校だけで行うものが教育の全てではないと言われて、個に応じたさまざまな取り組みが成されていますが、仲間たちと対面で触れ合った学校というシステムも、そう悪いものではないと思えるのが卒業式なのかもしれません。