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「あらたな悪徳」について
「アンドレ・ブルトン伝」(アンリ・べアール著 塚原史・谷正親訳 思潮社)の「第Ⅲ部 シュルレアリスム革命」の「第一章 あらたな悪徳」についてまとめます。愈々ブルトンによる「シュルレアリスム宣言」が登場してきます。「たんなる序文にするか、シュルレアリスムの説明にするか、シュルレアリスム・グループの思想を擁護し啓蒙する文章にするか、この年の十月に出版されたさい、『シュルレアリスム宣言』という題がつけられたことで、これは運動を制度化する理論的文章として読まれがちである。ところが、この文章はそのあとにくる『溶ける魚』と一体を成していて、『溶ける魚』の本質を解明し、その価値を正当化するものだったのである。」そして運動を前進させるための文章もありました。「前進するために多様性を残しつつも、ついにシュルレアリスム・グループーというのも、以後、このグループはそう呼ばれるからだがーが、一枚岩を形成したのである。もちろんそのリーダーはブルトンであったが、それは彼がグループ内の第一の座を欲したからではなく、自然にそうなったのだ。彼にはリーダーにふさわしい威厳があり、しかもそれは計算された身振りとか、ひとつひとつの語が重々しく響くゆっくりとした話し方によって、つつましやかに示される威厳だった。」シュルレアリスムの目指したものは何だったのか、こんな箇所がありました。「シュルレアリスムの思想を分析したがるのが一般的な傾向だが、その思想の信奉者たちが生を再創造しようとしていたことを忘れてはなるまい。彼らは、形式的な絆は関係なしに、感情で結ばれた共同体を形成していたが、それはブルトンがもっとも必要とし、彼に元気を取り戻させてくれるもののひとつだった。」今回はここまでにします。