Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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「彫刻複製写真の歴史」について
「像をうつす」(金井直著 赤々舎)の「1 彫刻複製写真の歴史」について、気に留めた箇所をピックアップいたします。本書は彫刻と写真の関わりを本論とするものですが、西洋彫刻史を紐解きながら、その都度写し出された画像についてさまざまな考察を加えています。「初期写真は被写体の明るさによって、1分単位から1時間単位まで、露光時間が大きく変化した。また長時間露光のためには動きのないものが好ましい。かくして真っ白な、そして不動のオブジェクトが最適の被写体となったのである。1840年前後、彫刻の特性が写真の揺籃を支えていたわけである。」ここに初期のコロディオン法が登場してきます。「当時の写真業者が画像の諧調や質を定める際、手本にしたのは、なによりも版画であった。アリナーリ兄弟も銅版画の洗練された諧調を常に心に留めて、”複製版画並み”の精度を獲得するために、ネガに手を加えた。~略~つまり複製技術の世界では、写真という実践・経験自体が、ことの始まりでも中心でもなかったということである。写真の発展史観を投影して、また写真の”科学性”を自明として、複製版画という経験(生産と受容)を周縁化しすぎてはならないだろう。写真の進歩によって伝統的な版画産業の衰退・解体が生じたという理解は、やや単純過ぎるのではないかということである。」さて、彫刻と写真の関連性に話を戻します。「彫刻史を語るうえで写真の役割は大きい。写真のおかげで我々は彫刻をよく知る。~略~彫刻実践は実によく写真に支えられている。~略~写真の黎明に、さまざまなかたちで彫刻が関わっていたことを忘れてはなるまい。互恵的とまでは言えないかもしれないが、彫刻と写真という二つのジャンルが、写真の出発時から寄り添いあっていたことは、まぎれもない事実なのである。」今回はここまでにします。