Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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週末 形而上絵画を堪能した1週間
週末になりました。今週を振り返ります。今週も陶彫制作のスケジュールが厳しいため、朝9時から夕方5時か6時まで作業を続けていました。創作活動にも当然緩急はあるものの、工房は制作をすることに専念できる環境であるため、思い切った休息は出来ません。そこで今週は水曜日に東京の美術館に行くことにして、この日に窯入れをして工房の電気が使えないようにしました。そうした気分転換が必要と感じたのは、創作活動は心身ともに追い込みをかけるために、このままでは精神が持たないのではないかと思ったからです。水曜日に出かけた上野の東京都美術館は気分転換には最適なところでした。鑑賞したのはイタリア人画家のジョルジョ・デ・キリコの展覧会で、デ・キリコが創り出した形而上絵画を堪能してきました。19世紀末まで西洋絵画は、光を捉えた写実技法や理に敵った遠近法など、ルネサンスに始まった伝統が頂点に達しているように見えたのですが、20世紀に入ってその伝統的な写実性が、写真の登場によって絵画は絵画としての革新的な発展を遂げていきます。さまざまなイズムによって絵画でしか成せない世界を構築していくのですが、その中に形而上絵画もありました。絵画として描かれたモティーフに哲学的な思索を与えられ、既存の概念を打ち破るような様式が登場してきたのでした。私もいつからか彫刻は視覚的または触覚的哲学だと言われ、空間に置かれたモノに理論を裏付けていくことになりました。自分の学生時代に、目前のモデルの量感を正確に把握し、塑造していくことに終始していた私は、モノの存在を考えるようになりました。周囲の空間も考慮しました。これも形而上絵画から始まった思索する芸術作品であり、私はダダイズムやシュルレアリスムも理解できるようになりました。現在の現代アートの現状も、決して過去の美術史と断絶しているわけではなく、その背景を探れば理解が可能だろうと思います。今週はそんなことを考えさせる1週間だったと思います。