2024.08.19
先日、東京駅ステーションギャラリーで開催されていた「ジャン=ミッシェル・フォロン展」を見てきました。テーマは「空想旅行案内人」となっていて、山高帽を被ってコートを着た人が、空想の世界を歩いていく絵画が展覧会場で散見されました。フォロンと同じベルギーの画家マグリットのようであり、謎に満ちた瀟洒な作風が、何気なく自分を捉えて離さない感じになって、ちょっと風刺の効いた絵画の方向を私も見つめていました。フォロンの芸術家としての背景を知らなかった私は、図録を買い求め、財団理事長による著述を読みました。「フォロンは早い段階でさまざまな記号からなる自分自身の語彙を作り上げた。それは、彼の視覚的思考と哲学的なメッセージの出発点になった。人間はディスクール(さまざまな言説)の中心にいて、非人間化と常に戦っている。その人間は、フォロンの初期のドローイングに数本の線だけで描かれた未熟な生き物として出現する。時を経てこの人間は常に変化を続けるとらえどころのない存在、大きなコートを羽織り帽子をかぶったなんの変哲もない男として、誰もが簡単に識別できる人物へと発展していった。孤独に、あるいは大勢の中に描かれるこの人物は、フォロン自身の恐怖や怒り、夢を反映したもう一人の自分と言える。~略~マグリット同様、フォロンは答えを提示したがらず、想像の扉を開き自由に解釈することを推奨していた。彼は私たちの問いに謎めいた答えで返してくる。『私が自由であるように、あなたも自由に解釈するように』と、私たちに思い出させるのが常だった。~略~フォロンには病的な収集癖があり、常に面白いものを探して蚤の市を徘徊し、スタジオをガラクタで埋め尽くした。フォロンの家は『驚異の部屋』と言わんばかりに、旅先での思い出の品々や珍しいもの、取るに足りないものなど、インスピレーションの源となるモノを詰め込んだ展示ケースが所狭しと並んでいた。」(ステファニー・アンゲルロット著)環境問題や社会問題にも自らの絵画を使って提言し、また風刺を加えた世界観を構築したフォロン。単なる美しい世界に留まらず、その底辺には人間らしさを唱える哲学があって、それがフォロンを世界的イラストレーターにしている理由かなぁと思いました。