2024.08.29
「抽象芸術」(マルセル・ブリヨン著 瀧口修造・大岡信・東野芳明 訳 紀伊國屋書店)の「Ⅲ 現代抽象美学の形成 」の中で具体的な芸術家を取り上げていますが、今回の単元はロシアの画家「カシミール・マーレヴィッチと至高主義」を扱います。「マーレヴィッチはタブローから、あらゆる具体的あるいは象形的要素を完全にのぞきさっただけでなく、いっさいの形態を暗示するもの、また形態になりえたかもしれないいっさいのものを除きさった。かれの美意識はそれほど徹底していたので、かれはみずからこれを至高主義的(シュプレマテイスト)と名づけた。ここではいかなる和解、妥協の余地もありえなかったし、また抽象の意志、かれにあっては同時に、しかもとりわけ、抽象本能の形をとっていた抽象の意志は、異常なほどの細心さをもって、もっとも単純な形態のなかからいくつかの抽象的な形態を選びだし、これらの形態によって、タブロー全体の空白から、タブローの主題となる、もっと正確に言うならタブローになる、あの感覚、あの内的経験をよび起そうとしているのである。~略~マーレヴィッチの芸術は純粋感情の美学となる。かれは書いている。『いつ、いかなる場所においても、創造の試みの源泉は、ひたすら感情のなかにのみ求められねばならない。』感情によって導かれる幾何学、これこそかれの絵画の本質をなすものであり、形があのような魔力をもっているのも、感情が形をみたす、そのみたし方によるのである。かれの有名な絵、『白の上の白』にわれわれが見るのは、純粋な詩的抒情へ到達するための、色彩の抹消、形態の抹消である。~略~マーレヴィッチは、疑いもなく、あらゆる画家のうちでもっとも抽象的な画家である。なぜなら、かれはタブローから具象的形態を、ついで幾何学的形態を除きさり、さらに形態になお残されたものをすべて非物質化することによって、無形態以外のなにものでもない非物質的な形態をさえ把握しようと望んだからである。かれが幾何学的形態を採用したのは、物語的、自然主義的なものから解放され、もはや一時的でも相対的でもない、本質的で永遠的な実在に到達しようとしたからにほかならない。」マーレヴィッチの徹底した姿勢は、ロシア構成主義に影響を与えたのでした。今回はここまでにします。