Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

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「ヴァザーリの位置と意味」
「芸術家列伝1」(ジョルジョ・ヴァザーリ著 平川祐弘・小谷年司訳)の最後に翻訳者平川祐弘氏による「ヴァザーリの位置と意味」が加えられています。「本書もあくまで『列伝』中のもっとも興味深い画人を翻訳、紹介することに主眼をおいた。イタリアへ行く観光客が多くなった昨今、そのなかでルネサンスの美術家の生涯について知りたいと思う人々や、文芸復興期の文化に関心を寄せる方々にこの訳書を読んでいただければ幸いである。~略~ヴァザーリがその『列伝』に取り上げたのは、右にあげたようなチマブーエやジョットにはじまって、レオナルド、ミケランジェロ、ティツィアーノ等に及ぶ一連のルネサンスの画人たちであった。それはたしかに西洋美術の盛代であったが、それにしても、かつてヴァザーリほどの大きな規模でもって西洋美術の歴史が書かれたことはそれ以前にはなかったし、また一人の著者の画人伝が後世にこれほど多くの読者を持ち、ルネサンス学者の絶えず言及する研究源となったことはそれ以後にもなかったのである。」それではヴァザーリの文章はどうなのか、そこに着目した箇所がありました。「ヴァザーリの文章は、レッテラート(文人)といわれた人文学者たちのいわゆる名文ではない。それでは、毎日規則的に働くことを信条としたこの律儀者が次々に書いていった『列伝』の文章もまた、『粗笨な仕事』であっただろうか。私はそうは考えない。ヴァザーリは、ある種のタイプの文豪のごとく、自分のリズムにあわせて、時には話すがごとくに書いていったのである。そのために16世紀イタリア人の文章としては、妙に文学的に気取るところが少なかった。自分にとってもっとも自然、かつ気安いように書いたからこそ文章にはずみがあるのである。とくにインサイダーとして芸術家の生活に密着して、逸話やアネクドートによって芸術家の真面目を伝える彼の筆法は見事に成功した、といえるであろう。その種の印象的な文芸性があったからこそヴァザーリはほかの誰にもましてこの『列伝』によってルネサンス美術の評価を定めてしまったのである。」これで「芸術家列伝」の「1」は終了ですが、引き続き「2」を読んでいきます。