2025.10.23
今日の朝日新聞「天声人語」の内容に眼が留まりました。全文を掲載します。「東京ではきのう気温がぐっと下がった。筆者と同様に、慌てて冬物を出した方もいるかもしれない。詩画で知られる星野富弘さんが衣替えの思い出を書いている。樟脳のにおいには『ほのかなやさしさ』が伴っていて、それは『運動会を見に来てくれた母のきものの裾のにおい』だからだ、と。星野さんは24歳のときに、事故で首から下が動かなくなり、口にくわえた絵筆で草花を描いた。季節の移ろいや、それを伝えてくれるにおいには、それゆえに敏感だったのだろう。刈り取られた後の稲穂、路上に散らばるギンナン…。秋本番のにおいと言って、わが脳裏に浮かぶものはいくつかある。けれども都会暮らしの身としては、キンモクセイを忘れるわけにはいかない。自宅の近くでは、数日前から芳香が漂い始めた。毎年のことでありながら、こんなにも甘くうっとりさせるものだったのかと、自然の力に驚かさせる。ふだんは目立たぬ植え込みに過ぎず、ほかの木々が輝く新緑の季節もぱっとしない。なのに、ある日突然『ここにいるよ』と鼻をくすぐる。あんなに小さなオレンジ色の花のどこに秘密が隠されているのか。自らが置かれた境遇も重ね合わせたのだろう。星野さんはキンモクセイの絵に、こんな言葉を添えている。『花が咲くのは年に一度/後は静かに時を待っている/あくせくするのは止めよう/一度でいい ひとつでいい』。花に顔を近づける。時の積み重ねの中で培われた命の力強さを、深く吸い込んだ。」星野さんは不遇の事故に遭うまで群馬県の中学校で体育科教諭として仕事をしていました。そのためか私たち教員経験者には、極めて印象的な作家なのです。謙虚な植物にも一年1度の存在感を示す時があり、香しい匂いを発する時期を静かに待っているというのが今日の内容でした。私は政治色のない「天声人語」に目が留まる習性があるらしく、たまにはこんな季節等の情緒が醸す記事があってもいいのではないかと思っています。