Yutaka Aihara.com相原裕ウェブギャラリー

note

クラシック音楽を聴く機会
20代の頃にオーストリアの首都ウィーンに住んで、リング(環状道路)沿いにある国立歌劇場に毎晩通っていました…と、書くと自分はいかにも文化意識が高く、経済的にも恵まれた、どちらかと言えば鼻持ちならない留学生に見えますが、実際はとんでもない状況の中で、それでも音楽に親しんでいたのでした。ウィーンにいたというだけでも、恵まれていたといえば確かにその通りです。環境の凄さに生活苦を忘れることもありました。国立歌劇場に通い始めた理由は、もちろん本場の音楽を聴きたいことが挙げられますが、ひとつは一人住まいのアパートに帰るのが嫌だったこと。ふたつめは秋から冬、さらに春先にかけて日本とは比べものにならないくらいウィーンは寒くて暖房費を節約したかったこと。みっつめは国立歌劇場の立見席は日本円で当時200円程度の安さで確保できたこと等々がありました。クラシック音楽は、以前のブログに書いたかもしれませんが、日本にいた時はそれに接する機会がほとんどなくて、とくに興味もなかったのでした。それが前述した理由で国立歌劇場に通いだし、その表現力の片鱗に触れ、素晴らしさを実感しました。クラシック音楽は人間の呼吸や歩くテンポに呼応しているようにも思えます。当時を振り返ると美術そっちのけで、モーツアルトやマーラーを語っている自分がいました。今はほとんどクラシック音楽のコンサートには行きません。生活環境とはそんなもので、たまにFMラジオから流れるクラシック音楽を聴くと、当時を懐かしむと同時に、もう一度あの世界に親しんでみたいという欲求が湧いてきます。不滅なモノとはそういうものでしょうか。