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ゲーテ「ファウスト」について
ドイツの文豪であるヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテがその生涯を費やして書き上げた戯曲「ファウスト」。岩波文庫より出版もされているようですが、いまだに読んだことがありません。「ファウスト」に初めて接したのは、在欧中にウィーン国立歌劇場でグノーのオペラ「ファウスト」を観た時だったように記憶しています。オペラとしてアレンジされている上、細かな台詞もわからなかったのですが、悪魔メフィストの誘惑によってファウストは罪を犯しながら、常に人間として向上しようとする意志やその迷いが伝わってきた印象でした。戯曲「ファウスト」は、人間に与えられた理性を巡って万物の創造主と悪魔が賭けをするところから始まり、ファウストはメフィストとあの世での魂の服従を交換条件に現世での快楽や悲哀を体験していきます。ファウストは素朴な娘マルガリータと恋に落ちて身籠らせ、さらにマルガリータの母や兄を邪魔だという理由で殺してしまいます。皇帝に仕え地位を得たファウストは経済再建を果たし、美女ヘレネーと結婚しますが、一人息子を失います。領地を譲り受けもしますが、ファウスト自身は失明し、やがて死んでいくのです。重大な罪を犯しながら、一方で尽力に対する評価も与えられます。これがファウスト的生き方(魂)と言えるものかもしれません。戯曲の最後にマルガリータの天上での祈りによってファウストの魂が救済されていくのです。ヴァーグナーのオペラにも表れる純粋な愛による魂救済の顛末は、自分にとってはまさに西洋そのものですが、日本人である自分はそこに違和感を覚えました。ファウストは手塚治虫による漫画もあるようです。今夏はこれを読もうかと思っています。